熊谷駅から車で10分ちょっと走った住宅街にある「芋屋TATA」。ここは、さつまいも農家の坂井孝行さんが経営している、さつまいもスイーツの専門店なんだ。坂井さんが農業を始めたのは2010年のこと。元々は金融業界に勤めていて、「世界の金融不況を目の当たりにしてきて、いずれ日本でも食べるに困る時代が来ると感じたのが農業を始めたきっかけです」と教えてくれたよ。おじいさんが持っていた熊谷市内の土地を開墾し、農場づくりから始めた坂井さん。開墾した畑の土壌を調べると、さつまいも栽培に適した土だと分かり、「私のような素人でも扱いやすい農作物だと聞いたので、さつまいも栽培を始めました」。
農場で主に作っているのは「紅はるか」という品種。今ではねっとり系焼き芋として知られているけど、坂井さんが農業を始めた頃はまだ世に出たばかりの新品種だったんだって。「独学で農業を始めましたからね、他の農家さんが扱っていない品種を作れば勝負できるかなと思って」。一斗缶で焼き芋を作り、リアカーで引き売りする様子をSNSでPRしたりと、いろいろ工夫をしながら販売。自作の店舗ができてからも焼き芋の評判が口コミで広がり、次第にファンが増えていったんだ。お店の一番人気は、紅はるかの焼き芋を乾燥させた「焼き芋の干し芋」(626円)。「生のさつまいもを蒸かして乾燥させるのが本来の干し芋です。これは焼き芋を乾燥させたもの。甘味が強いのが特徴なんです」。
その後も「芋屋TATA」のさつまいもスイーツはどんどん話題となり、2015年に現在の場所へとお店を移転。坂井さんがDIYで建てたという店内にはパグやゴリラ、チンパンジーの置物が置かれ、とっても楽し気な空間なんだ。「何も分からない状態で農業を始め、今では畑の規模も県内最大にまで成長しました。思い返せば『紅はるか』がまだ世間で認知される前からうちで扱ったことが大きかったですね」と坂井さん。農業はきつい、きたない、かっこわるいってイメージが多いそうなんだけど、手探りでいろんなことにチャレンジすることで「農業ってかっこいい」を伝えたかったんだって。現在は熊谷市の創業塾でセミナー講師をやったり、農業大学校で講師をやったり、坂井さんの農業マインドを次の世代に伝える仕事もしているんだ。
「焼き芋アイスのせ」(442円)は、紅はるかの焼き芋に熊谷のジェラート専門店「ジェラートマリノ」のミルクアイスを乗っけた人気スイーツ。あったかい焼き芋にひんやりアイスの組み合わせって、めっちゃおいしいんだよね~。
芋ジャムは「焼き芋」「安納芋」「紫芋」の3種あって、値段はそれぞれ410円。材料は芋と砂糖だけっていう無添加仕上げのジャムなんだ。パンに塗るだけじゃなくて、アイスやヨーグルトに添えたりお菓子作りに使うって人も多いみたい。
「TATA」の意味はちょっと深くて、“True Agriculture is Try and Activity(本当の農業は挑戦と行動から)”というお店のスローガン。それと「TATA」はラテン語でお父さんを意味するので「新しい農業の父になる」っていう坂井さんの思いも詰まっているんだ。