グリーンとオレンジのポップなひさしが目印の「モア松屋」は、1951(昭和26)年に生まれた昔ながらのアイス屋さん。「昔はこの裏に牧場があって乳牛を沢山飼っていたそうです」と教えてくれたのは、2021年からお店を経営する別井勝さん。明治時代に創業した「松屋牛乳店」では、牧場で絞った牛乳をそのまま殺菌、瓶詰して販売していたんだって。「冬のある日、当時の店主が余った牛乳に砂糖を混ぜて放置しておいたら凍ってしまったそうです。それを試しに口にするとおいしかったことから、風船詰めにして凍らせた牛乳を軒先に吊るして販売したら『おいしい!』と、近所のお子さんたちの間で人気になって。これが当店のアイスのルーツです」。
先代の頃は5月のGWから10月の市民運動会までがお店の営業期間。「松屋が開くと夏が始まる」。羽生市民にとってこのお店は夏の始まりを知らせる存在であり、ここで売られているアイスは夏の記憶に強く残っている懐かしの味なんだ。羽生の夏の風物詩として愛された「モア松屋」は2020年に始まった新型コロナの影響で5月のオープンを断念。店主やスタッフが高齢だったことから創業69年目でお店を閉めることに。「羽生の歴史の一部ともいえる『モア松屋』店がなくなるのは悲しいですよね。後世に残すべき大切な店ですから、私が事業を継ぐことを決めました」。別井さんはアイス作りの修業と店内のリニューアルを行い、2021年5月にお店を再開したんだ。
今から70年以上も前に生まれた松屋のアイスは、北海道産のミルクをたっぷり使った昔ながらの逸品。パリパリの皮に挟んだ「松屋もなか140円」はミルクと砂糖の優しい甘みを感じるロングセラー商品なんだ。「お年寄りの方がよく『子供の頃は歯医者や床屋の帰りに親に買ってもらった』とおっしゃって。昔のお子さんにとって当店のアイスは“ごほうび”だったみたいです」。別井さんは先代のレシピと製法をしっかりと受け継ぎ、昭和に生まれた思い出の味を守っているんだって。「今はコンビニに行けばおいしいアイスは沢山売ってます。でも、この店とこの味は絶対に変えてはいけないと考えています。余計な物を入れずに先代の味を守っていくことが私の使命です」。
ソフトクリームと新鮮なミルクを両方楽しめちゃう「フロート」のおっきいバージョンが「贅沢フロート」。写真の「いちごミルク630円」はいちごミルクの甘みと冷凍イチゴの酸味がマッチして爽やかな味わい。
別井さんが倉庫から出してくれたのは、先代が昔使っていたアイス専用の木箱。これにアイスを詰め込んで、町の中を売り歩いていたとか。表面のペイントがはがれちゃっているの、味があっていいよね♪
アイスもなか、ソフトクリーム、シャンデーは公式サイトから注文すれば全国どこにでもお届け。「小さい頃に食べた味だから」「SNSで見て食べたかったから」と、ネット通販も徐々に人気が出てきてるんだって。